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仙台高等裁判所 昭和30年(ラ)10号 決定

抗告人 沼宮内光一

相手方 平野井木材工業株式会社 外一名

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の理由は別紙書面記載のとおりである。

本件記録によつて見ると、相手方等は先に抗告人か本件物件につき鈴木雅也に対し先取特権に基いてなした競売手続につき第三者異議の訴を提起するとともに右競売手続の取消を求めたので、原裁判所は民事訴訟法第五百四十九条第四項により準用される同法第五百四十七条第二項に則り右競売手続を取り消す旨の決定をなしたこと及びこの決定が本件抗告の対象となつていることが明らかである。

ところが民事訴訟法第五百四十九条、第五百四十七条に基く執行処分の取消決定はその当否が結局本案である異議の訴訟において判断されるべきものであつて、いわばそれまでの仮の処分に過ぎないものであるから、その性質にかんがみて同法第五百条第三項を類推し右決定に対しては同法第五百五十八条の即時抗告は許されないものと解するのを相当とする。

なお抗告人は競売法との関連において原決定の不当を主張するが、競売法による競売に関しては同法に特別の規定のない限りその性質の許す範囲において民事訴訟法強制執行に関する規定を準用すべきものであり、又競売法第十九条は動産競売手続において第三者異議の訴を提起した場合における手続の停止にのみ関する特則規定であるから、この場合においても既になした執行処分の取消については民事訴訟法第五百四十九条を準用してしかるべきものと解する。従つて原審に抗告人の主張するような不当はない。

よつて本件抗告を不適法として却下すべきものとし、民事訴訟法第四百十四条、第三百八十三条、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 村木達夫 石井義彦 上野正秋)

抗告の理由

一、競売法は民事訴訟法に対しては特別法の関係に在るので両法に夫々の規定のある場合には競売法による競売事件に於ては競売法の規定が民事訴訟法のそれに優先して適用されるべきものであり競売法の規定を準用すべきものである。

二、今本件につき之を観るに相手方の本件申請は抗告人の委任により開始せられた執行吏の動産に対する競売手続に付相手方等から第三者異議の訴を提起すると同時に競売手続の取消の仮りの処分を申請したものであるが斯う云う風に競売法に基く動産競売手続に付第三者異議の訴の提起があつた場合に関しては同法に明文がある。

即ち相手方が本件競売手続に付第三者異議の訴を提起した場合その提訴の証明を得た上に、之を執達吏に提出すればこのことに因り競売手続は直ちに停止されるべきものであつて提訴者は民事訴訟法第五百四拾九条第四項を準用して競売手続の停止、取消の決定を求める必要がなく、こんな申請は法律上利益ないものとして却下されなければならない。

三、競売法第拾九条は動産の競売手続に於ける第三者異議の訴提起に基因する手続の停止に関する特(別)則を定めたものであるが茲には唯停止のみあつて取消の字句は見当らない、従つて手続の取消はこの場合執行吏に於て之を為すべきものではなく又提訴者に於ても手続の取消を得る必要なく提訴者の有つと云う所有権は競売手続の停止により競売の実施を妨げることで一応は保全出来る実情である。

即ち競売手続の取消を求めた本件申請及び之を許容した原判定は何れも違法である。

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